次世代医療といわれる遺伝子治療の成否の鍵を握る最も大きな要因の一つは、遺伝子を目的の臓器、組織、及び細胞に効率よく運搬する運び屋(ベクター)である。研究代表者はこれまで、従来の非ウイルスベクター、特に正電荷リポソームにバイオサーファクタントを含有することにより遺伝子導入効率が著しく上昇することを明らかにしてきた。 そこで本研究では、正電荷リポソームの開発基盤となる研究として導入効率の高い独創的なバイオサーファクタントを含有した正電荷リポソームの詳細な細胞内遺伝子導入の分子機構の解明することを試みた。共焦点レーザ顕微鏡、及びフローサイトメータを用いて観察、解析した結果、バイオサーファクタントを含有した正電荷リポソームは、従来の正電荷リポソームとは異なり、 1、クラスリンを介したエンドサイトーシス 2、細胞膜との融合 の二つの経路により導入遺伝子が細胞内に取り込まれることを明らかにした。特に2、の細胞内遺伝子導入により、迅速かつ大量に細胞内に遺伝子が導入されることが分かった。 これらの結果は、遺伝子治療分野において、安全で効率の高い非ウイルスベクターの開発に対する基盤研究として意義の大きい研究である。
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