研究課題
白色脂肪組織は生体の余剰エネルギーを蓄積する器官というだけではなく、生体のエネルギー代謝を調節する重要な器官である。申請者は、白色脂肪細胞の肥大化にFGF受容体2を介するシグナリングが重要な役割を果す事を明らかにした。本年度では、このFGF受容体2のリガンドの可能性が考えられたFGF21について、遺伝子改変マウスの作製と解析を行った。FGF21遺伝子欠損マウスはメンデルの法則に従って出生した。またその後も外見上明らかな表現形質は認められなかった。しかし、8週齢以降、FGF21遺伝子欠損マウスは、野生型マウスに比較し体重の増加傾向が観察された。そこで、2ヶ月齢マウスの組織重量を検討したところ、多くの組織の重量に大きな差は無かったが、白色脂肪組織の重量増加が認められた。この白色脂肪組織の重量増加は、細胞内にトリグリセリドを蓄積した白色脂肪細胞のサイズの増加、すなわちトリグリセリド蓄積の増加が原因であった。従って、FGF21遺伝子欠損マウスは通常食飼育下で肥満傾向を示すことが明らかになった。この白色脂肪細胞の肥大の分子メカニズムについて検討を行ったところ、FGF21遺伝子欠損マウスにおいては白色脂肪組織におけるトリグリセリド分解活性の減少と、トリグリセリド分解酵素の発現減少が認められた。また、血中パラメーターを検討したところ、白色脂肪組織におけるトリグリセリド分解の結果生じる遊離脂肪酸濃度の減少が認められた。以上の結果を総合して、FGF21は白色脂肪組織における脂肪分解を促進し、白色脂肪組織の増大を抑制していることが明らかになった。しかし、FGF受容体2遺伝子欠損マウスの表原形質とFGF21遺伝子欠損マウスとは異なっていたことから、FGF21がFGF受容体2のリガンドではないことが明らかとなった。以上、本研究で得られた知見は、基礎生物学だけではなく、肥満症の発症、治療法開発にも貢献するものと期待される。
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