Fgfファミリーとしては現在22種類のFgfがhuman/mouseで同定されており、その標的レセプターとしては4種類のFgfrが同定されている。これまでにゼブラフィッシュを用いた機能阻害実験により、Fgf19が前脳のGABA作動性ニューロンとオリゴデンドロサイトの分化に関与していることを明らかにしている。そこで本研究では、網膜神経細胞の分化におけるFgf19の機能と眼形成過程におけるFgf19の標的受容体及びFgf19によって活性化される細胞内シグナル伝達経路について検討した。まず、Fgf19の初期の網膜神経細胞の分化に対する影響を検討するため、neurodとis11の発現パターンを検討した。その結果、Fgf19機能阻害胚でneurodとis11は正常に発現していた。さらに、Fgf19機能阻害胚の網膜神経節細胞とアマクリン細胞においてHuC/Dも正常に検出され、後期の網膜神経分化も正常であった。受精後3日のFgf19機能阻害胚の網膜神経の層構造も正常であった。これまでに、Fgf19が網膜の鼻側-耳側軸の特性決定に関与していることを明らかにしているが、今回Fgf19は網膜神経細胞の神経分化には関与していないことが示唆された。また、Fgfr1は受精後18時間と24時間に、Fgfr4は受精後24時間に網膜に発現しており、それぞれの遺伝子の機能阻害胚を解析した結果、Fgfr1とFgfr4機能阻害胚で網膜前方におけるephrin A3の発現が大きく減少していた。さらに、Fgf19機能阻害胚の網膜前方におけるMAPK経路の活性化が消失していることから、Fgf19シグナルはFgfr1とFgfr4を介してMAPK経路を活性化することにより網膜の前後軸の特性決定を調節していることも明らかになった。
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