研究概要 |
1. ミオシン1E結合分子の同定 : 免疫共沈法、あるいはGST pulldown法を用いてミオシン1Eと特異的に結合する分子の同定を進めた結果、SH3ドメインを有する分子量約26kDaのタンパク質SH3P2を見出した。また、SH3P2はミオシン1EのTail Homology(TH)2ドメインに結合すること、それによってミオシン1Eとホスホイノシタイドとの結合を抑制する可能性を見出した。 2. ミオシン1Eの細胞内動態について : 前年度の解析より、MKNI細胞においてミオシン1Eは血清等の細胞外刺激に応答して細胞周辺部位の細胞膜ラッフリング領域に速やかに局在することを見出している。そこで、ミオシン1Eの細胞内動態に及ぼすSH3P2の影響を検討した。その結果、SH3P2を発現させた際には、細胞外刺激に伴うミオシン1Eの細胞膜ラッフリング領域への移行が阻害されることが明らかとなった。 3. ミオシン1Eによる細胞形態制御の分子機構 : GFP融合ミオシン1E、あるいはその各種欠失変異体を発現させた際に細胞形態が如何に変化するかを比較検討したところ、MKNI細胞ではミオシン1Eの過剰発現によって葉状仮足形成の亢進に伴い細胞面積が増大すること、また、それにはミオシン1EのTH2領域が必要であることを見出した。なお、SH3P2を発現させた場合には細胞の伸展が抑制された。 本研究により、ミオシン1EはTH2領域を介してホスファチジルイノシトール(4, 5)ニリン酸[PI(4, 5)P_2]、あるいはPI(3, 4, 5)P_3と結合することで細胞膜ラッフリング領域における細胞形態の変化を制御すること、また、SH3P2はミオシンIEの「Negative regulator」として機能する可能性を見出した。
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