本研究で明らかにする目的は、新規経口ワクチンデリバリーシステム(OWDS)により粘膜免疫機構を構成している誘導組織の一つである腸管関連リンパ組織へCCR5をミミックした環状抗原、ENVおよび粘膜アジュバンドを送達させ、個体内で二段階のCCR5およびENV特異的免疫応答(粘膜免疫応答と全身系免疫応答)が誘導できるかである。これまでに、アカゲザルを用いて検討を行ったところ、OWDSを介した経口免疫により、ENVに対する分泌型IgAが膣内に有意に誘導されることが判った。さらに、糞便中にもCCR5に対する特異的なIgAが有意に分泌されていることが判った。OWDSの構成因子であるMCTMのこれまでの研究成果から判断すると、MCTMがパイエル板の典型的なM細胞を介して抗原をデリバリーしたと考えられる。本研究成果は、すでにJournal of Immunology(2009)にin pressされることが決まっている。現時点でHIV由来のウイルス抗原を標的としたワクチンを開発し続ける限り、同じ失敗を繰り返す危険性が極めて高いため、我々はHIV感染自然抵抗者(ESN)の免疫応答を良く理解し、ワクチンによってHIV感染自然抵抗者と同等の免疫応答を付与することを目的としたHIV粘膜ワクチン開発を目指そうと考えているが、そのための重要なOWDSができたと考えている。今後、膣内に、より強力なHIV感染を阻止する免疫応答を誘導させる方法を開発したいと考えている。
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