1. 単球に対する酸化リポタンパクの効果 健常人から単離したHDLを硫酸銅酸化した後、その酸化修飾体でヒト単球および単球様細胞株U937を処理したところ、酸化LDL(oxLDL)よりは軽度であったが、200μg/mL以上の濃度において両細胞の毒性が発現し、それは10μM以上の硫酸銅酸化時において顕著であった。また、酸化HDL(oxHDL)をタンパク質画分、タンパク質-脂質結合体および脂質画分にそれぞれ分画して同様に毒性を検討した結果、oxLDLとは異なり、タンパク質画分処理群において顕著なU937細胞生存率の低下が認められた。 2. 疾患マーカーと酸化リポタンパクの結合体の毒性機序の解明 HDLの硫酸銅酸化時にCreactive protein(CRP)またはSerum amyloidA(SAA)を添加することにより炎症性マーカーoxHI)L結合体(CRP-oxHDLとSAA-oxHDL)を調製した。それら結合体によるヒト大動脈血管内皮細胞の生存率の変化を測定したところ、SAA-oxHDL処理群による生存率はoxHDLとほとんど同じであったが、CRP-oxEDLではoxHDLよりも毒性は小さかった。また、それぞれのタンパク質画分の毒性においても同様の傾向が認められたこと、およびそれぞれの炎症性マーカーのアポリポタンパク質への結合が検出されたことから、HDL酸化時にCRPが共存するとCRPはアポタンパク質に結合することにより酸化アポタンパク質による毒性を軽減すると推察された。 3. 各種リポタンパク修飾体による血管内皮細胞への直接効果 グルコースとのインキュベートによる糖化およびperoxynitrite酸化修飾したHDLによる血管内皮細胞毒性は、硫酸銅酸化体と比較して大変小さく、その変動はそれぞれのHDL酸化修飾体中の過酸化脂質量と相関が見られたことから、それぞれの修飾時に生成する過酸化脂質やその修飾体が血管内皮細胞毒性の一因であることが推察された。
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