平成19年度では、ストレス適応モデルマウスを作成し、本モデル動物における選択的5-HT_7受容体拮抗薬SB269970脳室内投与の効果について検討した。 1.ストレス適応モデルマウスの作成 マウスに拘束ストレス刺激を負荷することにより、体重増加率、摂食量および摂水量の低下や、ホールボード試験における情動性の低下などの急性ストレス反応が観察された。これらのストレス反応は、拘束ストレス刺激の慢性負荷により消失し、ストレス適応の形成が認められた。したがって、マウスに拘束ストレス刺激を慢性負荷することにより、ストレス適応モデルを作成できることが明らかとなった。 2.ストレス適応モデルマウスにおけるSB269970脳室内投与の効果の検討 拘束ストレス刺激の慢性負荷期間にSB269970を脳室内投与したところ、ストレス適応形成の指標である体重増加率、摂食量および摂水量の低下の消失の発現が遅延した。また、ホールボード試験において、SB269970を脳室内投与したマウスは、ストンス適応を形成したマウスとは異なった行動パターンを示した。これらの知見より、脳内の5-HT_7受容体を阻害することにより、ストレス適応の形成に障害が生じることが明らかとなった。 3.今後の予定 本研究の結果は、ストレス適応の形成機構において、5-HT_7受容体が重要な役割を担っていることを示唆するものである。また、ごく最近、SB269970の脳室内投与によりストレス適応の形成が障害されたマウスでは、外界からの刺激に対する過感受性や、衝動性の亢進を示唆する行動学的特性も認められている。今後はこれら情動異常の特徴を明らかにするための行動学的検討を行う。また、ストレス適応および非適応モデルマウスにおける脳内5-HT_7受容体機能の変化を検討し、ストレス適応の形成機構における5-HT_7受容体の役割の詳細についても考究する。さらに、得られた研究成果については、学会発表や学術論文にて公表する。
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