研究概要 |
平成19年度は、DOTAPを構成脂質とする正電荷リポソーム (DOTAPリポソーム) をCpG-ODNのキャリアーとして用いることにより、CpG-ODNによるマクロファージからのIL-10の生産を減少させ、IL- 12p70を増加できること、このDOTAPリポソームの効果に、従来, 重要であると考えられてきたCpG-ODNの細胞への取り込み量の増加ではなく、DNA- PKcsによるCpG-ODN認識の回避が関与している可能性を明らかとした。平成20年度は、さらにDOTAPリポソームをより効果的なCpG-ODNのキャリアーするため、CpG-ODNの負電荷とDOTAPリポソームの正電荷の混合比(電荷比)に注目し検討を行い、以下の成果を得た。1) CpG-ODNとDOTAPリポソームの電荷比 (-/+) を低くする(0.06以下)ことによってマクロファージおよび樹状細胞からのIL-10の生産が抑制され、IL-12p70の生産が増加することを明らかとした。さらに、蛍光標識CpG-ODNを用いて細胞内動態を検討したところ、CpG-ODNとエンドソームマーカーであるトランスフェリンおよびLysoTrackerとの共局在は、CpG-ODNとDOTAPリポソームの電荷比(-/+)の上昇に依存して減少した。このことから、電荷比を変化させることによってCpG-ODNの細胞質あるいはエンドソームへ移行を制御できることが明らかとなった。2) CpG-ODNをマウスに投与し、in vivoにおけるIL-10およびIL-12p70の生産を検討したところ、in vitroでの検討と同様に電荷比(-/+)を低くすることによって血清中のIL-10の生産が抑制され、IL-12p70の生産が増加することを明らかとした。以上の結果から、CpG- ODNによるIL-10およびIL-12の生産バランスは、CpG-ODNとDOTAPリポソームの電荷比を変化させることによって制御可能であることを明らかとした。また、この作用機構には、DOTAPリポソームによるCpG-ODNの細胞内動態の改変が関与している可能性を明らかとした。
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