研究概要 |
血液透析の際には,人工物である透析膜と血液成分の接触により活性化される白血球が産生する活性酸素が透析アミロイドーシスや動脈硬化などの長期透析合併症を引き起こすと考えられている.本研究では血液細胞間の相互作用に着目してこのメカニズムを解析した.その結果,透析膜と血小板の接触により血小板表面に接着分子P-セレクチンの発現が誘導され,白血球表面のリガンド分子(PSGL-1)を介して血小板と好中球の複合体が形成され,これにより好中球からの活性酸素産生が誘導されることを明らかにした.また透析膜と血漿の接触により補体が活性化し,これに伴って生じるC5aが好中球表面のPSGL-1の集積を引き起こして血小板と好中球の複合体形成と活性酸素産生を増強することを示した.さらにこの血小板-好中球相互作用を妨害する薬物としてα-トコフェロールとグリチルリチンを見出し,両薬物が血液透析に伴う白血球の活性化を抑制しうることを示した.
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