本年度は、マイクロチップ上で単一の細胞を分離し、孤立させたまま効率よく捕獲・培養を可能とするデバイスと一連のシステムの開発を行った。システムの主要部にはマイクロ流体デバイスを用い、CCDカメラによる経時観察を行いながら操作可能なシステムを構築した。また、倒立顕微鏡上には簡易型インキュベーターを配し、検鏡下にて細胞培養を可能とした。デバイスのデザインは、単一細胞操作に適したものを考案した。具体的には、マイクロ流体デバイスに汎用されるpolydimethylsiloxaneにより作製したレプリカをガラスディッシュ(直径35mm)にマウントしたものを用い、デバイス内部の主要な部位には、二つの平行するメインチャネル(幅100um)とそれらを繋ぐドレインチャネル、直接細胞を取り扱う半円筒状のマイクロチャンバー(直径100um)を配した。単一細胞の分誰・捕獲は、細胞分散液および細胞培養液をメインチャネルに導入することで行った。メインチャネルを流れる溶液の流量を調節し、2液間のバランスを最適にすることによりマイクロチャンバーにおける単一細胞の孤立捕獲が可能となった。実際に使用したのは、PC12細胞、NIH3T3細胞など種々の株化細胞とアストロサイトの初代培養細胞であったが、その全てにおいて、単一細胞の孤立捕獲に成功した。また、捕獲チャンバー内での微小培養を試みたところ、細胞培養液を適宜交換することにより、比較的長期間の培養が可能であった。さらに、微小培養した細胞のイメージングを行った。生細胞の核染色にはHoechst33342を、ミトコンドリア染色にはMitotorackerを用い、また細胞骨格であるアクチンの染色には、固定化後にPhalloidin染色を行ったところ、これら細胞関連対象物のイメージングが可能となった。
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