研究課題
単球からマクロファージへの分化は、macrophage colony-stimulating factorの分化因子により誘起されることが知られているが、分化因子をマクロファージ自身が産生するなど、その分化機構には不明な点が多い。申請者は、マクロファージの集積する部位が低酸素であることに着目し、マクロファージへの分化に酸素濃度が関与しているのではないかと考えた。低酸素による1)単球の化学的性質の変化や2)単球からマクロファージへの分化の機構を明らかにすることは、組織に浸潤した単球のマクロファージへの分化を引き金として発症する様々な病態の進展機構を解明する手がかりとなる。そこで、今回、ヒト単球系THP-1細胞とTHP-1由来マクロファージを用いて検討した。1. 低酸素による単球の化学的性質な変化ヒトTHP-1由来マクロファージにおける低酸素状態でのhypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)および分化マーカーperoxisome proliferator activated receptor-γ(PPAR-γ)の発現増大と、酸素濃度に負の相関性を見いだした。一方、HIF-1α依存的に増大する増殖因子による細胞増殖作用は見られなかった。2. 低酸素状態でのマクロファージ活性化のメカニズム低酸素状態でマクロファージの貪食作用が促進され、さらに、単球においても同様な低酸素下での貧食促進の作用が認められた。低酸素状態の単球においてマクロファージなどの食細胞にみられる性質が認められたことから、低酸素による単球からマクロファージへの活性化の可能性が考えられた。低酸素は、単球においてHIF-1αとPPAR-γの発現を増大し、さらに貧食作用を促進することによって、単球からマクロファージへの分化に関わる可能性が示唆された。
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