5'-AMP-activated protein kinase(AMPK)の活性化(リン酸化)により、抑制性神経伝達を担うGABA受容体の一つであるGABA_B受容体のR2サブユニットの細胞内領域に位置する783番目のセリン残基(S783)がリン酸化を受けることが判明した。マウス大脳皮質由来培養神経細胞に100μM NMDAを暴露すると、カルシウムの流入と共に、24時間以内に神経細胞死が誘導されるが、このNMDA暴露直後にAMPKの発現及びリン酸化を測定したところ、AMPKの発現はそのままで、リン酸化が著名に上昇することが判明した。このとき、S783のリン酸化も同様に上昇した。またこれらのリン酸化の増加はNMDAアンタゴニストにより阻害された。したがって、NMDA受容体の新規シグナルとしてAMPK活性化を介したGABA_BR2サブユニットのリン酸化(p783)が明らかとなった。一方、AMPKを活性化させる薬物としてしられる、ビグアナイド系薬物をマウスに腹腔内投与したが、しかしながら、海馬、大脳皮質など脳内部位のいずれにおいてもAMPKの活性化およびp783の変動は認められなかった。また、マウスを2日間の絶食にさらしても、変動しなかった。したがって、中枢神経系においては、AMPKは、グルコース代謝によってではなく、NMDA暴露のようなカルシウムシグナルの活性化がGABA_B受容体機能を調節する可能性が示唆される。
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