研究概要 |
本年度は,腸管粘膜固有層に存在する好酸球と樹状細胞の中間的な表現型を示す特殊な細胞の表現型を詳細に解析することにより,それらが生体内で担っている生理的意義を予測するための基礎情報を収集する事を主目的とした。それらは腸管粘膜固有層に存在するCD11c陽性細胞のおよそ5〜6割を占める細胞集団であるにもかかわらず免疫学的機能に関する解析は進んでいない為,腸管粘膜免疫システムの理解を深める上で非常に興味深い。腸管の好酸球様樹状細胞,他の組織好酸球ならびにその他の血液細胞群を抗体染色とセルソーターにより高純度に単離し,網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果,腸管好酸球様樹状細胞は他の組織中好酸球と酷似した遺伝子発現パターンを示した事,好酸球欠損マウスの腸管ではそれらの細胞が認められなかったことから,本研究で着目している細胞は腸管粘膜固有層に存在する好酸球であると結論づけた。一方で,他の組織好酸球と比べて明らかに異なるパターンを示す発現分子を同定することにも成功した。また,好酸球欠損マウスの腸管粘膜免疫応答について解析したところ,野生型マウスとは異なる免疫応答が観察された。これらの結果は腸管好酸球が腸管粘膜免疫応答を制御する為の特殊な役割を担っている事を示唆している。本年度に作成したOVA特異的TCR発現好酸球欠損マウスを利用すること等により,これらの結果を精査しながら腸管好酸球の生理的意義を明らかにしていく予定である。
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