アディポネクチンはN端の多様性領域、コラーゲン様ドメイン、球状ドメインから構成される脂肪細胞特異的蛋白質で、三量体、六量体、それ以上の高分子多量体として血中に存在する。このような存在様式や構造類似性から、本分子はsoluble defense collagenファミリーに分類される。本ファミリー分子の補体Clqやmannose-binding proteinは、古くからPAMPsと結合することが知られている。同様に、surfactant protein等もLPSを認識し、TLR4と協同して免疫応答を誘導する。しかも、LPSの病原性を識別し、CD14やLBPと相互作用するとも報告されている。本研究では、これらファミリー分子の機能構造学的特徴から、アディポネクチンによるPAMPs認識について検討した。pETベクターとOrigamiB大腸菌株による発現系を用いて、チオレドキシンとHisタグを付加したリコンビナントアディポネクチンを発現させた。フレンチプレスによる菌体破砕で、目的蛋白を効率的に可溶化し、ニッケルカラムによるクロマトグラフィーで精製することに成功した。調製したリコンビナントを用いてLPS結合を検討すると、既知のLPS認識分子LBP、CD14、MD-2と同様にLPSに対する結合が認められた。また、その結合はTritonX100に対して感受性であった。アディポネクチンのLPS認識モチーフについて検討を加えたところ、球状ドメインのみを発現させた場合においてもLPS結合が認められ、本構造中にLPS認識モチーフが存在することが示唆された。現在は、アディポネクチンが認識するLPSの分子構造について検討を進めている。また、CHO-DG44哺乳類細胞を用いて、アディポネクチン安定高発現細胞を樹立し、アディポネクチンの形成する高次構造とLPS結合能との機能連関についても検討を進めている。
|