今回は本科研費最終年度(2年目)であったが申請書に従い、カリペルチンAの全合成に向けた取り組みを行った。 カリペルチンAの固相全合成を目指し、まず予備実験を兼ねたカリペルチンBおよびカリペルチンEの固相全合成を行った。構成する異常アミノ酸であるβメトキシチロシンの合成については前回の報告で述べた。しかしながら、アジリジンを開環させながらメトキシ基を導入する反応について完全に制御されておらず問題があった。多くの条件を検討した結果、メタノール溶媒中において、室温下ボロントリフレートを滴下することにより立体選択性、化学収率ともに満足のいく結果が得られた。また再現性に優れており、グラムスケールでの合成法に展開することに成功した。3、4-ジメチルピログルタミンの合成についても大量合成法を確立した。この合成はセリンを出発原料に用いることで、保護基を多く用いる必要性があり、工程数に問題があるものの、安全にかつグラムスケール合成に優れている。 このようにして調製したFmoc-異常アミノ酸類と入手可能なFmoc-アミノ酸を用いて固相上でペプチドの伸長実験を行った。まずカリペルチンEの合成を検討した。樹脂には2-ルロロトリチルルロリド樹脂を用い、カップリングを検討した。その結果、アミン成分がN-メチルアミンの時にはHATU、HOAtを用いる時がカップリング効率が高く、通常のアミン成分の時にはD正PC、HOBtで十分に反応が進行することがわかった。切り出しにはHFIP/ジククロメタンによって定量的に行うことができ、さらにTFA処理によって保護基を安全に除去することができた。HPLCによる精製によって、カリペルチンEの合成に成功した。 次にカリペルチンBの合成を検討した。条件は、先と同様に行った。樹脂から切り出された後に環状デプシ化に挑戦した。様々な条件を検討したものの満足のいく結果をえることができなかった。しかしながら、微量ではあるものの望む環状化体も得ることに成功している。ここに、カリペルチンBの全合成を達成することができた。今後、環状化の条件検討を引き続き行い、効率の良い条件を探索する予定である。さらにアナログ体合成についても行い、CCR5とのアンタゴニスト活性の測定を行って行く予定である。
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