研究概要 |
GLO Iは,解糖系で生じるカルボニルストレスの消去システムを担う主酵素であり,大腸癌,肺癌及び前立腺癌や,抗癌剤に耐性を示す培養癌細胞株で高発現がみられることが報告されていることから,新しい癌治療薬開発のターゲットとして非常に有望視されている.本研究では,in silicoスクリーニングによるGLO I特異的阻害剤開発を目的として,抗癌剤候補化合物としてのGLOI阻害剤のin vitro評価系を構築し,基質遷移状態をmimicすることが予測される4位=O,5位-OH flavonoid化合物のGLO I阻害効果についての構造活性相関解析を行った.まず,大腸菌発現系を用いて作製したrhGLO I,市販のyeast GLO I,ヒトGLO I一過性発現細胞抽出液について,酵素活性及び既存の阻害剤BBGCに対する感受性を,反応生成物の吸光度測定によって評価した.その結果,BBGCは,rhGLO Iに対してのみ,文献値に照らし合わせて妥当な阻害効果を示した.癌治療薬としてのGLO I阻害剤の活性評価に当たって,安定供給できるrhGLO Iを用いることは,高精度のデータを得る上で重要な意義をもつ.このrhGLO Iを用いたin vitro assayでflavonoid化合物のGLO I阻害効果を測定し,構造活性相関解析を行った.その結果,4位=O,5位-OH flavonoid骨格の(1)1'-6'ベンゼン環のOHの数が多いほど阻害効果が高く,特に5'位にOHをもつことが,阻害効果に大きく寄与する,(2)3,7位に嵩高い官能基があると,阻害効果が低下する,(4)6位のOHがOCH_3になると活性が下がる,(5)2,3位間の二重結合は,阻害効果に必須ではない,ということが示された.これらの知見に基づいてGLO I阻害剤設計のpharmacophoreを構築し,新規骨格をもつGLOI阻害剤の設計を進めている.
|