1. 基質遷移状態概念に基づいたヒドロキシルメチルカルボニル(HMC)を組み込んだHIVプロテアーゼ阻害剤とHIV-1プロテアーゼとの相互作用が、これまでX線結晶構造解析およびNMR解析により推察されていたが、今回、中性子結晶構造解析により水素結合相互作用が明らかにされ、HMCが理想的な基質遷移状態ミミックであることが証明された。そこで、HMC-ヒドラジドを組込んだ擬似対称型化合物のデザイン手法により合成した比較的強いHIVプロテアーゼ阻害活性を示す化合物をリードとして、HIV-1プロテアーゼとの複合体の分子モデリングを構築した。得られた分子間相互作用から、より良い相互作用が得られるように、両N末端部位を構造変換した擬似対称型化合物をデザインした。擬似対称型化合物の合成は、HMCの水酸基を保護する合成経路を確立した。得られた擬似対称型化合物のHIV-1プロテアーゼ阻害活性を評価したところ、nMレベルの阻害活性を示した。 2. アタザナビルのコア構造をHMC-ヒドラジドへと変換した擬似対称型化合物を合成した。HIV-1プロテアーゼ阻害活性の評価より、これらの擬似対称型化合物は有為な阻害活性をもつことが分かった。 3. HMC-ヒドラジドを組込むデザイン手法をマラリア原虫由来のプラスメプシンに応用して、擬似対称型化合物を合成し、プラスメプシンII阻害活性を評価したところ、若干活性は低いが、有為な阻害活性を示した。よって、HMC-ヒドラジドを用いたデザイン手法が、他のアスパラギン酸プロテアーゼにも応用できることが分かった。
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