研究概要 |
【研究の意義・重要性等】ヒトにおけるメチル水銀(MeHg)の排泄経路は主に糞中であり,そのほとんどが無機水銀として排泄されている。一方,MeHgの中枢神経毒性はMeHgそのもの,それともMeHgから派生した無機水銀,あるいは両水銀化合物によるものか明らかとなっていない。これらのことから,本研究はMcHgの排泄及び代謝の点で重要である。そこで,ヒトにおけるMeHgの脱メチル化反応について明らかにするため,下記の細胞株を用いて検討を行なった。【研究成果】ヒト由来細胞株は正常肝細胞(ChangLiver),アストロサイトーマ(U373MG)及び神経芽細胞腫(SK・N・SH)を用いた。MeHgの毒性は神経由来のSK-N-SHに対して最も強く,1μMで有意な細胞増殖抑制が認められた。Me且gの蓄積はMeHg曝露24時間後にはプラトーに達し,1オM曝露時の蓄積量はSK-N・S且において最も高かった.一方,細胞内無機水銀は時間とともに増加した。MeHgの脱メチル化能を納内総水銀濃度に対する無機水銀濃度として表した場合。Chang Liverが最も高かった。これまでにMeHgの脱メチル化反応には活性酸素種が関与することが報告されている。そこで,活性酸素種の生成促進剤または捕捉剤を用いて検討したところ,いずれの細胞も過剰のスーパーオキシドアニオン(O_2)により脱メチル化反応が有意に促進された。しかしながら,O_2の主な生成部位であるミトコンドリアの阻害剤を用いた実験では,0_2の関与は証明できなかった。一方,ヒドロキシラジカルの関与は認められなかった。以上の結果より,ヒト組織におけるMeHgの脱メチル化反応は,活性酸素種のうちO_2により起こっていることが考えられ,その脱メチル化能は今回用いた細胞株の中で肝臓由来のChang Liverにおいて最も高いことが明らかとなった。
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