薬物応答性の核内受容体であるCARは、薬物代謝酵素や薬物トランスポーターの遺伝子発現調節に中心的な役割を果たしている。一方で、近年CARとエネルギー代謝の関連が指摘されている。実際に当研究室においても、CARがコレステロール合成酵素の発現調節に関与している可能性を見出している。本研究では、このうちコレステロール合成の最終段階を触媒する24-デヒドロコレステロール還元酵素(DHCR24)について、CARを介した遺伝子発現調節機構を解析した。その結果、in vitroレポーターアッセイにより、ヒトならびにマウスのDHCR24遺伝子はCARにより転写活性化されること、さらにヒト遺伝子では-1532から-1444のプロモーター領域にCAR応答配列が存在することが示された。 薬物代謝酵素の発現レベルは、異物の曝露だけでなく、生理・栄養状態の変化によっても変動することが知られている。当教室では、コレステロール欠乏により活性化される転写因子SREBP2はマウスCyp3a11遺伝子の発現を抑制的に調節していることを見出している。そこで本研究ではこの分子機構の解明を試みた。HepG2細胞を用いたinvitroレポーターアッセイの結果より、Cyp3all遺伝子プロモーターの-1523から-1725の領域にSREBP2による転写抑制応答領域が存在することが示された。コンピューターサーチにより、この領域に核内受容体HNF4の結合モチーフが見出され、実際にゲルシフトアッセイにおいて、このモチーフにHNF4が結合することが示された。また、このモチーフに変異を導入したレポーターコンストラクトでは、SREBP2による転写抑制作用は認められなかった。以上の結果より、SREBP2はHNF4の転写活性化機能を抑制することで、Cyp3a11遺伝子の発現を抑制している可能性が示された。
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