研究概要 |
本研究は, 遺伝子組換え技術を基に, 安全性, 有効性かつ経済性に優れた, 血中滞留型多量化アルブミン製剤を開発することを目的としている. 1)酸化修飾アルブミンの近位尿細管間質障害に及ぼす影響 血中で酸化レドックスに関与するアルブミンは, 病態時, 酸化ストレスの亢進とともに過度に酸化修飾を受け, 種々の細胞に悪影響を及ぼすことが言われている. しかしながら, どのようなアミノ酸残基が修飾を受け, どのようなメカニズムでその障害を引き起こすのか, 明らかでない. そこで, 慢性腎臓病時に血中に認められる酸化修飾アルブミンに着目し, その構造・機能・動態解析を行った. この酸化修飾アルブミンは, 含硫黄アミノ酸残基や塩基性アミノ酸残基が有意に酸化修飾を受けること, さらにその修飾体は近位尿細管上皮細胞上のスカベンジャー受容体CD36を介して, 尿細管間質障害を引き起こすことが明らかとなった. 2)ヒト血清アルブミンバリアントの構造・体内動態解析 現在, 60種類以上のアルブミンバリアントが存在する. それらバリアントの構造・動態特性の把握は, 網羅的に個々のアミノ酸残基の役割を考えることができ, 優れた機能性アルブミンを設計する上で非常に重要である-昨年度, 一残基置換バリアント17種を用い解析したが, 今回新たに9種類のバリアント(3種のC末端欠損体, 3種の糖鎖付加体及び3種のN末端プロペプチド付加体)を用いて, その解析を行った. その結果, C末端が欠損することでアルブミンの半減期が有意に減少すること, 逆にN末端に一つアミノ酸が付加されると半減期が上昇すること, さらにドメインIIに糖鎖を付加すると血中滞留性が上昇することが示唆された. 今回得られたこれら基礎的情報を下に, 現在, 機能性多量体化アルブミンの設計・評価を行っている.
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