研究概要 |
本研究は,遺伝子組換え技術を基に,安全性,有効性かつ経済性に優れた,血中滞留型多量化アルブミン製剤を開発することを目的としている. 1) 遺伝子組換えマンノース付加アルブミンの肝ターゲティングへの応用 ヒト血清アルブミンは通常糖鎖を持たない単純蛋白質であるが,Asn-X-Thr/SerというN型糖鎖修飾のコンセンサス配列を遺伝子組換えにより導入することで,高マンノース付加アルブミンの作製が可能となる.今回,この高マンノース付加アルブミンを作製し,肝臓へのターゲッティングを試みたが,本変異体は肝クッパー細胞へ選択的に取り込まれること,さらにNO付加高マンノースアルブミン変異体が,肝虚血再還流障害に対し,有益な作用を示すことが初めて明らかとなった. 2) 血中滞留性多量化アルブミン変異体の基礎的な構造,機能,体内動態特性 これまでの検討により,ドメインIIIに位置する570番目のグルタミン酸残基や573番目のリジン残基を変異させること,N末端に一つアルギニン残基を付加させること,さらにドメインIIに糖鎖を付加させることで,アルブミンの血中滞留性が上昇する可能性が示唆された.そこで,これらアミノ酸残基を多重変異させ,さらに重合化した多量体化アルブミンを作製したが,多量体化アルブミン変異体の二次構造や三次構造など構造特性に変化はなく,その動態特性はモノマーのものと比較し,極めて長い血中半減期を示すことが,またそれに伴い,肝臓・腎臓への移行性が極めて抑制されることが明らかとなった.加えて,ラットに対し熱浮腫を惹起させ,多量体化アルブミンによる改善効果を調べたが,多量化に伴う分子量の増大によって,高い浮腫改善効果も認められた. 今後,臨床応用も含め,さらに検討することで.甑中貯留型多量化アルブミンプロドラソグとしての可能性を追求できるものと思われる.
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