研究概要 |
本研究は,遺伝子組換え技術を基に,血中滞留型多量化アルブミン製剤を開発することを目的として企図された。まず,アルブミンの体内寿命に影響を及ぼすアミノ酸残基の基礎的情報を得るために,26種類の異形アルブミンバリアント及び種々の酸化・糖化修飾アルブミンを用いて,体内動態及び抗酸化能などを詳細に解析した。その結果,ドメインIIIに位置する570番目のグルタミン酸残基や573番目のリジン残基を変異させること,N末端に一つアルギニン残基を付加させること,さらにドメインIIに糖鎖を付加させることで,血中滞留性に優れたアルブミンが作製できる可能性が示唆された。そこで,これらアミノ酸残基を多重変異させ,さらに重合化した多量体化アルブミンを作製した。多量体化アルブミン変異体はその二次構造や三次構造などに変化はなく,動態特性はモノマーのものと比較し,極めて長い血中半減期を示すことが明らかとなった。加えて,ラットに対し浮腫を惹起させ,多量体化アルブミンによる改善効果を調べたが,多量化に伴う分子量の増大によって,高い浮腫改善効果も認められた。今回の結果は,血中貯留型多量化アルブミンプロドラッグとしての可能性を示唆するものであるが,今後より安全性など詳細な検討が必要であろう。
|