研究概要 |
ヒスタミンH1受容体遮断薬(抗ヒスタミン薬)は、末梢のヒスタミンH1受容体阻害作用に基づき、種々のアレルギー疾患に繁用されているが、中枢のH1受容体阻害によると考えられる鎮静作用も有している。中枢移行性を低くすることで、鎮静作用、つまり眠気を来たすことの少ない抗ヒスタミン薬が開発されたが、この第二世代抗ヒスタミン薬服用中に眠気が生じること(ヒト)があることが観察されている。そこで本研究では、第二世代抗ヒスタミン薬の鎮静作用の個人差とトランスポーター遺伝子多型の関連性を明らかにすることを目的とした。 本年度は、抗ヒスタミン薬の鎮静作用の客観的評価法として、眼球運動解析法の定量性の評価のため、d-マレイン酸クロルフェニラミンの用量反応性試験(UMIN000000859)を行った。健康成人男性6名を対象に、無作為化、二重盲検下、休薬期間を6日以上とした、1,2,4mgの3用量、3期クロスオーバーデザインにより行った。薬力学評価として、断続的眼球運動最大速度(saccadic peak velocity;SPV)およびBond and Lader の visual analogue scalesによるAlertness scoreを用いた。薬物動態学的評価として、投与2,3,6時間後の血漿中クロルフェニラミン濃度をHPLC-UV法により定量した。安全性評価として、自覚症状の調査並びに医師の診察を行った。結果として、SPVとAlertness scoreとの間、SPVおよびAlertness scoreそれぞれの最大効果(ΔEmax)と用量との間、および、台形法により算出した血漿中濃度時間曲線下面積とSPVのΔEmaxとの間に有意な相関性が示された。以上より、SPVは抗ヒスタミン薬の鎮静作用を定量的に評価可能と考えられた。
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