アルツハイマー病のバイオマーカーとして、ヒトβアミロイド(1-42)や老人斑が挙げられるが、相関性は必ずしも証明されていない。その他のバイオマーカーとして、脳内におけるコレステロール代謝物である24S-ヒドロキシコレステロールが報告されているが、詳細は不明である。 本年度は、昨年度開発した脳脊髄液中24S-ヒドロキシコレステロールGC-MS定量法について更なる改良を加え、前処理溶液をスケールアップすることで再現性の良い血漿中の24S-ヒドロキシコレステロール定量法を開発することができた。このGC-MS法を用いて健常人(小児、成人)の血漿検体に応用し、24S-ヒドロキシコレステロールおよび27-ヒドロキシコレステロールの定量を行った。その結果、すでに報告のあるように、小児から成人になるにつれ血漿中24S-ヒドロキシコレステロール濃度が減少することが認められた。一方、27-ヒドロキシコレステロール濃度はこのような変化は認められなかった。この健常人の結果をもとに、今後患者検体に応用する予定である。また前年度に確立した脳脊髄液中24S-ヒドロキシコレステロールおよび27-ヒドロキシコレステロールのGC-MS定量法を用いてLewy病患者および健常人(小児、成人)について脳脊髄液中の24S-ヒドロキシコレステロールおよび27-ヒドロキシコレステロールの定量を行った。現在、検体数を増やして疾患との関連性を比較検討中である。 また、昨年度行った24S-ヒドロキシコレステロールの細胞毒性条件を用いて、アルツイマー病治療に有効と報告のあるスタチン系薬剤および茶抽出由来のポリフェノールを添加して細胞毒性の軽減効果を検討したところ、軽減効果のあるものが認められた。軽減効果と化学構造との関連性については更に検討を加えているところである。
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