アルツハイマー病のサロゲートマーカーとして、脳内におけるコレステロール代謝物である24S-ヒドロキシコレステロールが報告されているが、その詳細は不明である。本研究は、24S-ヒドロキコレステロールのサロゲートマーカーとしての有用性と新規治療法におけるターゲットの可能性について検討した。本年度は、初年度に確立した血漿中24S-ヒドロキシコレステロールに、他のヒドロキシコレステロール7種を加えたGC-MSの一斉定量法を開発した。さらに健常人の血漿検体に応用し、ヒドロキシコレステロールの一斉定量を行った。その結果、小児から成人になるにつれ、血漿中ヒドロキシコレステロールのうち、24S-ヒドロキシコレステロールのみが加齢に伴う減少が認められた。アルツハイマー病同様の認知症の一つであるレビー小体病患者の脳脊髄液中24S-ヒドロキシコレステロールの定量に応用したところ、非脳神経変性疾患患者に比べ、低濃度傾向であった。さらに、アルツハイマー病のバイオマーカーであるヒトβアミロイド(1-42)を定量したところ、レビー小体病患者の方が低濃度の傾向が認められた。しかしながら、疾患の進行具合によって、脳細胞が少なくなっている場合、これらは低濃度傾向になりうるため、経時的に測定して増減をモニターしていく必要があり、また進行具合と比較する必要があると判断された。以上の結果をもとに、今後アルツハイマー病患者検体に応用する必要がある。また、アルツイマー病治療に有効と報告のあるスタチン系薬剤および茶抽出由来のポリフェノールを添加して、24S-ヒドロキシコレステロールの細胞毒性軽減効果を検討したところ、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、カテキン、ヘスペリチンおよびダイゼインに細胞毒性軽減効果が認められ、アルツハイマー病治療の新しい治療法の一助として提案できることが示唆された。
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