水溶性カーボンナノホーン(CNH)がリンパ節指向性を有するかどうか、癌モデルマウスで評価した。ヒト癌細胞を皮下移植して腫瘍を形成させたマウスへ、抗癌剤貯蔵水溶性CNHを腫瘍内投与した。この結果、3週間後には腫瘍近傍の腋窩リンパ節が黒染され、CNHの集積が明らかとなった。腋窩リンパ節は乳癌の主要な転移先の1つである。腫瘍周囲には腋窩リンパ節以外にも、鼠径リンパ節、上腕リンパ節が存在するが、これらにはCNHを検出できなかった。CNHの集積した腋窩リンパ節を組織学的に検討したところ、CNHは主にリンパ洞に局在していた。リンパ洞はマクロファージに富み、流入するリンパ液中の異物を認識し取り込む役割を果たす。これらの結果は、腫瘍内投与された水溶性CNHが、腫瘍と腋窩リンパ節の間のリンパ管経由で腋窩リンパ節特異的に移行したことを示唆する。よって、水溶性CNHはリンパ節転移を伴う乳癌の局所投与用ドラッグキャリアとして機能する可能性が、実験動物レベルで示された。 さらに腫瘍内投与した抗癌剤貯蔵水溶性CNHは、抗癌剤単独投与に比べ、高い抗腫瘍効果を示した。投与開始2週間後の腫瘍内残存抗癌剤を定量したところ、抗癌剤単独投与群ではほとんど残存していなかったのに対し、CNH投与群では約60%の抗癌剤が残存していた。すなわちCNH投与腫瘍では、腫瘍が抗癌剤に長期間暴露されたことにより、高い抗腫瘍効果が得られたと考えられる。CNHによる抗癌剤の投与部位での高い滞留性は、副作用の軽減につながると期待される。
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