研究課題
昨年度、カーボンナノホーンへ(CNH)内部へ光線力学療法剤亜鉛フタロシアニン(ZnPc)をさせ、この複合体へ光照射すると、CNH由来の光線温熱効果とZnPc由来の光線力学効果により、強力な癌細胞死滅効果が得られることを見いだした。本年度、ZnPc内包CNHの詳細な殺細胞活性メカニズムを検討したところ、ZnPcが光励起されると電荷分離、すなわちZnPc^<+・>とCNH^<-・>が生成し、さらにCNHA^<-・>から酸素へ電子移動によってO_2^<-・>が生成することが示唆された。通常、ZnPcは光照射により、活性酸素種として一重項酸素(^1O_2)を生成することが知られている。すなわちZnPcはCNHと複合体化すると、産生する活性酸素種を^1O_2からO_2^<-・>へ変化させることが示唆された。O_2^<-・>は、タンパク質分解活性を有することが知られており、ZnPc内包CNHが細胞内取込を受けることも考慮すれば、その光線力学効果は、細胞内で発生したO_2^<-・>によるタンパク質分解に起因するものと考えられる。さらにCNHの体内動態を検討するため、CNHを酸化ガドリニウムGd_2O_3でラベル化し、マウス血管内に投与した。この結果投与した70-80%のCNHは肝臓に集積し、特にマクロファージに貪食されたことが示された。これは以前に報告した結果、すなわち、CNHを腫瘍内投与すると近傍の支配リンパ節内のマクロファージ局在部位に集積することと一致する。以上得られた結果は、外部刺激を利用したCNHのリンパ節転移癌治療の実現に向けて、重要な知見を与える。
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