ガレクチンはガラクトースを含む糖鎖を認識するレクチンで、細胞の分化、増殖、アポトーシスおよびシグナル伝達を調節する。卵巣ではgalectin-1とgalectin-3が黄体に発現し、性周期や妊娠に伴いダイナミックに発現変動する。本研究では、黄体の退行メカニズムを調節する主な因子であるプロラクチン(PRL)とプロスタグランジン(PG)F2αがガレクチンの発現に与える影響について検討し、ガレクチンが黄体の退行にどのように関与するかをプロジェステロンの活性調節に注目して明らかにした。PRLの産生阻害薬であるブロモクリプチンの投与や授乳期マウスを強制離乳して血中のPRL濃度を低下させると、黄体におけるgalectin-1の発現が増強した。一方、galectin-3はPGF2αにより発現誘導をうけるプロジェステロン分解酵素(20α-HSD)と常に同調して発現し、PGF2αにより調節をうけることが予想された。退行過程の黄体においてgalectin-1とgalectin-3はPRLとPGF2αにより調節をうけ、黄体の退行に異なった役割を果たすことが明らかとなった。 また、ガラクトサミン誘発性肝炎モデルにおいて肝臓のクッパー細胞におけるgalectin-3発現が優位に増強し、抗galectm-3抗体を前投与することにより炎症を抑制できることを発見した。抗galectm-3抗体はリンパ節や脾臓におけるTNFαの産生を抑制することにより炎症を抑制すると考えられる。この炎症抑制メカニズムは現在検討中であるが、PRLやPG、そしてプロジェステロンの関与が予想される。 本研究により、ガレクチンはPRLやPGと密接に関係して、黄体の退行や炎症反応を調節することが明らかとなった。本研究により明らかとなった所見は、ガレクチンの機能解明に重要な情報を提供すると思われる。
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