研究概要 |
核膜内膜蛋白Man1は、私たちを含む複数の研究グループによる研究から、receptor-associated Smads(R-Smads)と直接結合し、TGFβ/BMPシグナルを負に制御する因子であることが明らかになってきた。私は哺乳類におけるMan1の生理的役割を調べるためにMan1欠損胚を作製し表現型解析を行った結果、血管新生の異常と同時に、心臓のルーピング逆位を含む、様々なタイプの心奇形を高頻度に呈していることを見出した。私は平成19年度、Man1欠損による心奇形発症の原因の1つとして、Man1と左右非対称制御メカニズムの関係に注目し解析を行い、次のような研究成果を得ることが出来た。Man1変異胚における左右軸マーカーNoda1およびNoda1下流因子(Lefty1/2, Pitx2)の発現パターンを全胚in situハイブリダイゼーション法によって調べた結果、これら左右軸マーカーは、いずれも胚の両側で発現し、かつ強く発現していた。またNoda1 co-receptor、cripto/crypticの発現量も上昇していた。側板中胚葉(lateral platemesoderm, LPM)におけるNoda1の発現は、通常、2体節期の結節(node)近傍、後方LPMで初めて認められ、その後、Noda1の自己誘導活性によって前方へとその発現領域が拡がっていく。しかし欠損胚では、2体節期、既に前方LPMで異所的なNoda1の発現が観察された。以上より、Man1がNoda1シグナル制御を介して左右軸形成に関与していることを示唆したと同時に、初期体節期のマウス胚前方領域には、現行の左右軸形成モデルだけでは説明できないNoda1誘導シグナルXが存在し、このシグナルをMan1は負に制御することで、正常な左右軸形成に関わる可能性が示唆された。
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