本研究課題は、脳をはじめとする神経系に顕著に発現しているが、その機能は未知であるRas類似低分子量GTP結合タンパク質Rigをテーマとするもので、神経細胞に於いてRigがどのような生理機能を担っているのかを探索することを目的としている。これまでの研究結果から、Rigを培養細胞内に過剰発現させると粒状のRig陽性構造物が免疫染色により検出され、その局在は細胞内に取り込ませたトランスフェリンや、リサイクリング系膜輸送のマーカー分子であるRab11の局在と一致することが明らかになった。本年度の研究成果として、Rigが神経細胞の形態変化に関与しており、その変異体を発現させることで神経細胞の突起、とりわけ樹状突起の形態が変化することを見出した。Rigが神経細胞で発現が顕著なことから、Rigが神経細胞の形態形成に於いて重要な役割を担っている可能性が推論される。又、Rigの変異体を神経細胞に発現させると、極性分化に異常を生じることを見出した。Rigタンパク質の変異体が過剰に存在することにより、神経細胞で見られるべき正常な極性分化の制御機構が阻害されたものと考えられる。本年度、及びこれまでの研究成果から、Rigが神経細胞に於いてリサイクリング系膜輸送、神経突起の形態形成や分化、極性決定の局面で重要な機能を担っている可能性がかなり高いとの結論を得た。これらの結果を踏まえ、Rigが神経細胞の活動を反映した、未知の形態変化や分化のプログラムを調節する可能性を今後更に検討して行きたい。
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