前年度までに、外生殖器形成過程では初期から後期にかけて、一貫してヘッジホッグシグナルを中心とした細胞増殖因子群の寄与が大切であることを明らかにしてきた。特に後期の外生殖器・会陰部形成過程においてさらにそのような細胞増殖因子群について調べるために、ヘッジホッグシグナル系のノックアウトマウスの解析に加え、今年度は重点的にWnt/beta-catenin系のコンディショナルミュータントマウスについて解析を行った。 Gli1-CreERマウス(Gli1遺伝子座にタモキシフェン誘導型Cre組み換え酵素をノックインしたマウス)とRosa26レポーターマウス(Creが作用すると永続的にbeta-galactosidaseを発現する)をかけ合わせ、タモキシフェン投与時にGli1を発現している細胞を遺伝的に標識し、その系譜解析を行ったところ、そのような細胞は尿道両側間葉に分布することが明らかとなった。このCre活性を利用し、beta-cateninのloss-of-function実験を行ったところ、雄の外生殖器の包皮形成が阻害された。一方、beta-cateninのgain-of-function実験では雌の外生殖器の包皮が厚くなり、雄の包皮に近い形態となった。したがって、ヘッジホッグシグナル応答細胞におけるbeta-cateninが外生殖器の雌雄それぞれの形態形成に極めて大切であるという結果が得られた。本研究で得られたこの結果は、アンドロゲンシグナルにヘッジホッグ及びWntシグナルが外生殖器の性的二型に関与することを示す初めての報告である。
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