これまでの本講座の研究により、これまで血管路は先に網目が形成され、その後血流により腫瘍血管が取捨選択されていくと考えられていたことを覆し、主要血管路は遺伝的なプログラミングにより規定されていることが明らかにされた。さらにその中で体幹と脳血管では血管路形成のメカニズムが異なることが示唆された。しかしながら脳血管路形成に関するガイダンス因子は具体的に明らかにされていない。そこで本研究課題では最新の鼓術であるゼブラフィッシュを用いた遺伝子トラップ法により、脳血管路形成における極性と方向のガイダンス因子を探索することにした。 平成19年は主に遺伝子トラップ法によって脳血管路に蛍光を発するトランスジェニックの取得を試みた。これまでに本研究室内と国立遺伝学研究所との共同研究により脳血管、静脈、動脈にそれぞれ蛍光を発するトランスジェニックの取得に成功している。次年度はこれを元にサザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーションとdatabaseを用いたin silico解析などを併用し遺伝子の特定を行いそれぞれの血管に得意な因子を探索する予定である。さらに、本研究に付随する形で、密着結合主要タンパクであるclaudinファミリーのうちいくつかが、脳血管系でも重要な機能を担っているが、発現特性に保存性が乏しいことに注目し、claudin遺伝子ファミリーの系統学的解析の再検討を行った。その結果、これまでゼブラフィッシュでclaudin19と記載されていたものが実は別の遣伝子であることと、それとは別に真のclaudin19を見出し、その初期発現を解析し、日本解剖学会総会にて報告した。
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