これまで初期血管路形成は先に網目が形成され、その後血流により主要血管が取捨選択されていくと考えられていたが、近年では主要血管路は遺伝的なプログラミングにより規定されていることが明らかにされ、さらにその中で体幹と脳血管では血管路形成のメカニズムが異なるにとが示唆された。しかしながら脳血管路形成に関するガイダンス因子は具体的に明らかにされていない。そこで本研究課題では最新の技術であるゼブラフィッシュを用いた遺伝子トラップ法により、脳血管路形成における極性と方向のガイダンス因子を探索することにした。 平成19年は主に遺伝子トラップ法によって脳血管路に蛍光を発するトランスジェニックの取得を試み、本研究室内と国立遺伝学研究所との共同研究により受精後30時間程度から血管系に蛍光を発するトランスジェニックの取得に成功した。平成20年度は、取得したトランスジェニックのどのゲノム領域に蛍光タンパク遺伝子が挿入されたか特定した。databaseを用いたin silico解析によって近隣領域の遺伝子を探索しトラップした遺伝子の候補を絞り込んだ。これらの候補遺伝子群をクローニングし、in situハイブリダイゼーションによる解析を行つたところ、哺乳類のアンギオテンシン・レセプターtype2と相同な遺伝子をトラップしていたことが明らかとなり、発生初期において同遺伝子が脈管形成に関与している可能性が示唆された。
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