本研究では、Dlg遺伝子の欠損が、神経堤に由来する細胞の発生分化に、どのような影響を与えるのかを調べることを目的としている。研究2年目となる本年は、昨年度に導入した2系統のトランスジェニックマウスTg(PO-Cre)およびTg(CAG-CAT-EGFP)を用いて(1)神経堤由来細胞を標識できるトランスジェニックマウスの作出を進めるとともに、トランスジェニックマウス完成までの期間を利用して、(2)骨形成に対するDlg欠損の影響についての解析を行った。 (1) トランスジェニックマウスの作製では、神経堤細胞自身がDlgを発現しているのかを知るため、2系統のマウスを交配してTg(PO-Cre/CAG-CAT-EGFP)マウスを作出し、このマウスで予想通り神経堤に由来すると言われている細胞(末梢神経系、副腎髄質、心臓流出路、顔面など)がEGFPによって標識されることを確認した。 (2) 昨年度、Dlg欠損マウスでは胸骨の形態および軟骨石灰化のパターンが異常になることから、Dlgが骨形成にかかわることが示唆された。しかし胸骨はその形成過程が複雑(2本の左右胸骨櫛が正中で癒合し、その後はしご状に骨化する)であることから、どの段階にDlgの欠損が影響しているのかわかりにくかった。そこでより単純な長管骨(上腕骨および大腿骨)に着目し、その形態、組織観察等を行った。その結果、胎生15.5日および胎生18.5日のDlg KOマウス長管骨は野生型よりも有意に短いが、骨端部の静止軟骨層の長さには有意差がなく、骨中央の石灰化領域(肥大軟骨層)が有意に短いこと、一方で骨の太さには有意差がないことが判明した。
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