平成19年度は当初の目標の通りに、まず対象動物であるサルの頭部に慢性細胞活動記録用チャンバーを取り付ける手術を2頭に行った。同時に、サルに提示する視覚刺激の作成を行った。視覚刺激としては、サルの眼前57cmに置かれたモニター上に赤色の光刺激を提示するものと、その光刺激が色々な速さで8方向に動くような視覚刺激を用意した。実験中はサルの眼球運動測定装置を用いて眼球運動をモニターしながら通常の細胞活動記録装置より単一細胞を単離したのちに光刺激を提示し、細胞活動を測定することによりその細胞の受容野及び特性を測定した。細胞活動記録を丹念に行うことにより動きの認知に関わると言われているMT(middle temporal area、V5)領域を同定した。受容野を測定している間に細胞が中心視野に応答するか、周辺部視野に応答するかも同時に調べた。その上で二種類の蛍光色素(ファルトブルー、ジアミジノイエロー)をそれぞれ中心視野及び周辺視野に各々注入した。さらに狂犬病ウイルスを中心視野及び周辺視野に個体を変えて注入した。一頭のサルについては脳標本を作製し、MT領域への注入が間違いなくなされていることを解剖学的に同定した。また、MT領域からの結合についても狂犬病ウイルス及び蛍光色素でラベルされた細胞を数える、及び重なりを調べることにより検討を加えている最中である。今現在、蛍光色素にて同定されるMT領域と他の領域との一次結合については、大脳皮質、外側膝状体を含めて既に他の研究グループによりなされている先行研究と同じ結果が得られている。今後は本研究の特徴である狂犬病ウイルスにより同定された越シナプスラベルの細胞を解析することにより、新しい知見を調べていく予定である。
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