本研究の目的は、正常の心臓において観察される交感神経刺激による心筋細胞のL型Ca^<2+>電流増大現象にRadが関与することを明らかにすることである。本年度はsiRNAを用いてnativeの心筋細胞で発現しているRadを抑制し、L型Ca^<2+>電流の変化を観察することを計画した。Radを抑制するとされる配列を決定し、それをpsisTRIKE^<TM>hMGFPプラスミドベクターに組み込み、続いて、このプラスミドベクター(Rad-siRNA)を培養新生仔ラット心室筋細胞に脂質二重膜法にて導入し、交感神経刺激によるCa^<2+>電流量の変化を測定した。ベクターの導入はhMGFPによる蛍光にて評価した。一般に心筋細胞に脂質二重膜法を用いてプラスミドベクターを導入する場合、導入効率が低いと言った問題点があるが、しかし、パッチクランプ法は、細胞一個を対象にするため、上記方法でデータの収集を行った。結果は、Rad-siRNAプラスミドベクター導入群と対照群との有意な差を認めるに至らなかった。原因として、(1)交感神経刺激による心筋細胞のL型Ca^<2+>電流増大現象にRadが関与しない、(2)Radの発現が充分に抑制されていない、が挙げられた。(2)の評価としてRadのタンパク質量の測定をウエスタンブロットにて行う方法が考えられたが、しかし、Rad-siRNAプラスミドベクターの導入効率が不良のため、評価不能であった。そのため、心筋細胞への導入効率が優れているアデノウイスルベクター(Rad-siRNA-アデノウイルスベクター)を作成することとした。ウイルスベクター作成は順調とは言えず、結果、平成20年度中に、Rad-siRAA-アデノウイルスベクターを完成することが出来なかった。
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