本研究は、PLCzetaが哺乳類の卵活性化精子因子であることを証明し、またその機能を明らかにすることを言的としている。そのために、PLCzetaの精子内局在および受精時の卵内分布を観察するためにPLCzetaに蛍光蛋白質Vbnusを付加したタンパク質を発現する遺伝子置換マウスと、卵活性化能を検証するためのPLCzeta欠損マウスを作出した。本年度はこれらのマウスの表現型解析を行った。 1) PLCzeta欠損マウスの発現解析 : ゲノミックPCR法により確認したPLCzeta欠損ヘテロマウス、ホモマウスにおける精巣でのPLCzeta mRNAの発現をRT-PCR法およびノザン解析により調べた。その結果ヘテロではPLCzetaの発現は激減し、ホモでは完全に発現が消失することを確かめた。また、PLCzetaタンパク質の発現をイムノブロティングにより解析した結果、野性型マウスの精巣上体尾部精子でのみPLCzetaが検出された。これらのことより、PLCzeta欠損マウスの作出に成功したことを明らかにした。 2) PLCzeta欠損マウスの表現型解析 : 野性型と欠損マウスでの形態的な表現型の違いとして有意な精巣重量の減少が認められた。体重などを含む他の表現型に相違は確認できなかった。精巣および精巣上体尾部のHE染色を行ったところ、ホモでは管腔内に成熟精子が認められず、円形精子細胞様の細胞が多くあった。種々の精子形成ステージマーカーによるRT-PCR法により、この細胞が減数分裂を終了した円形精子細胞であることを明らかにした。 3) ヘテロマウスの受精能の解析:尾部精子に3割程度の成熟精子が存在するヘテロマウスの受精能を自然交配および体外受精により検証した。その結果、産仔数は有意に減少し、体外受精においては4割程度の前核形成率であった。ヘテロマウスに認められる成熟精子は、カルシウムオシレーション誘発能が正常であることが示唆された。
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