単離培養褐色脂肪細胞のミトコンドリアとER間でのカルシウム相互作用について、細胞内カルシウム濃度変化をカルシウム感受性蛍光色素(Fura2-AM)、ミトコンドリア膜電位変化をローダミン123を細胞に負荷することによって測定した。 褐色脂肪細胞でのノルアドレナリンβ受容体の活性化をイソプロテレノールによりで行うと、受容体結合型Gタンパク質を介して細胞内遊離脂肪酸が産生される。この遊離脂肪酸は褐色脂肪細胞のミトコンドリア膜上に発現しているUCP(uncoupling protein)を活性化して、H^+濃度勾配を短絡させることでミトコンドリアを脱分極させる。この脱分極によって、ミトコンドリアからカルシウムが細胞質に流出する(β作用)。この細胞内カルシワム濃度変化は2相性の緩やかな上昇を示した。しかし、PLCの阻害剤であるU-73122によって2相目のカルシウム濃度上昇は抑制された。また、滑面小胞体のカルシウムポンプのプロッカー(CPA)により、滑面小胞体内のカルシウム濃度をβ刺激後測定すると、刺激前に比べると減少していた。これらのことは、β作用によって生じた細胞内カルシウム濃度の上昇が、PLCの活性化による細胞質カルシウム濃度上昇とERからのカルシウム流出を起こすことを示唆した。今後、滑面小胞体とミトコンドリアに蛍光タンパク質を発現させ、各小器官内のカルシウム濃度変化を測定し、相互作用を確認する。
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