研究概要 |
自己にシナプスを形成する「オータプス培養細胞」を作製し、発達に伴うシナプス小胞動態の可塑的変化を6-7day in vitro(DIV)、13-14DIV、21-23DIVにおいてパッチクランプ法にて解析した。 1、前年度は活動電位発生に同期してシナプス小胞から開口放出されたグルタミン酸(Synchronous release)によるEPSCは培養期間に応じて増加することを報告した。本年度は、より生理的な環境下で評価するために、自発的グルタミン酸放出によって惹起されるminiature EPSCを観察し解析を行った。結果、培養初期から培養中期にかけては有意な変化を認めず、培養後期に増大した。 2、シナプスの発達はEPSCの大きさで定義できることが報告されている(Gekel & Neher, 2008)。これを基に、本研究で得られたEPSC amplitude(nA)とPvr(%)の相関関係をプロットした。興味深いことに、培養初期と培養後期では正の相関がみられたが、培養初期では負の相関が得られた。このことから、培養初期は従来の相関関係が得られないことが判明した。この原因については更なる実験が必要である。 3、シナプス開口放出は細胞外Ca^<2+>感受性があり、Pvrも細胞外Ca^<2+>によって変化する。シナプスの発達によるPvrの低下にはPvr多様性分布は関係しなかったことから、発達により細胞外Ca^<2+>感受性が変化する可能性を考えた。実験は、細胞外Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]。)を0.5、1、2、4、8、10mMに設定し、各濃度におけるEPSC amplitude(nA)を計測した。結果、発達とともに細胞外Ca^<2+>に対する協同性(Cooperativity)は低下し、Hill係数は増加したことから、発達によるPvr低下はCa^<2+>感受性低下が原因ではなかった。 本研究により、シナプスの発達に伴ってPvrが低下することは明確となったが、その原因となるメカニズムを明らかにすることはできなかった。
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