本研究の目的は、インスリン受容体刺激により活性化される下流の細胞内情報伝達系のうち5-HT_<2A>受容体と分子複合体を形成する蛋白質(5-HT_<2A>受容体アソシエート蛋白質)群を同定し、同定した各々の蛋白質による細胞膜5-HT_<2A>受容体の発現制御機構を明らかにすることである。 本年度はシアン色蛍光蛋白質(CFP)を融合させた5-HT_<2A>受容体の遺伝子安定発現細胞株(HEK-5HT_<2A>-C細胞)を用いて5-HT_<2A>受容体の細胞内局在をCFP蛍光で可視化する実験を行い、5-HT_<2A>受容体のインターナリゼーションに低分子量G蛋白質であるARF1が関与していることを見出した。GTP結合型のARF1をこの細胞に発現させると5-HT_<2A>受容体の細胞膜発現が抑制された。 一方GDP結合型のARF1では、5-HT_<2A>受容体の細胞膜発現が逆に促進され、インターナリゼーションは阻害された。またHEK-5HT_<2A>-C細胞においてセロトニン誘発性の一過性細胞内カルシウムイオン濃度上(カルシウムトランジェントを測定したところGTP合型のARF1がそのピーク値を低下させ、GDP結合型のARF1が逆に増加させることが確認された。このことはARF1によるHEK-5HT_<2A>-C細胞のセロトニン応答性変化が5-HT_<2A>受容体の細胞内局在変化と対応していることを示唆する。 今後ARF1が関与する5-HT_<2A>受容体のインターナリゼーションの分子機序の全貌を明らかにするために、ARF1以外の5-HT_<2A>受容体アソシエート蛋白質についても探索を進めている。
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