肥満の脂肪組織ではマクロファージの浸潤が増加し、慢性的な軽度の炎症反応を引き起こす。これまでの我々の研究において、ユビキチンリガーゼCbl-b遺伝子欠損マウスの脂肪組織ではマクロファージの浸潤や活性化が認められ、インスリン抵抗性を引き起こすことを報告した。近年、マクロファージの活性化因子として、脂肪酸が注目されている。そこで、本研究では、Cbl-bを介した脂肪酸によるマクロファージ活性化機構について検討した。 In vitroにおいて、飽和脂肪酸添加はマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞において、Cbl-bやサイトカインの発現上昇を引き起こした。さらに、Cbl-bを強発現したRAW264.7細胞は飽和脂肪酸によるNFkB経路を介したサイトカインの発現上昇を抑制した。このことはCbl-bがサイトカインシグナル経路を負に調節していることを示す。In vivoにおいて、飽和脂肪酸がCbl-bを介したマクロファージの浸潤や活性化に関与することを確認するために、高脂肪食による影響を検討した。Cbl-b遺伝子欠損マウスにおける脂肪組織では、野生型マウスに比べてマクロファージの浸潤が増大し、サイトカイン発現上昇やアディポカイン発現異常がみられた。その結果、Cbl-b遺伝子欠損マウスの脂肪組織及び骨格筋において、Aktリン酸化の減弱を引き起こした。以上の知見より、Cbl-bが飽和脂肪酸によるサイトカインの発現機序に関与し、インスリン抵抗性の発症機構に寄与することが示唆された。
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