中枢性化学受容器が延髄に存在すると推定されているが、どのような細胞か同定されていない。ラット延髄由来初代培養細胞を用いて、細胞外pH変化やCO_2負荷に対する細胞内Ca応答のイメージング解析を行った。pH7.0以下の細胞外の酸性負荷によるCa応答はacid-sensingion channel 1a(ASIC1a)を介したものであった。pH7.1以上の細胞外の酸性負荷では細胞内Ca応答は引き起こされないにも関わらず、高CO_2負荷によって細胞内Ca応答が引き起こされた(2008年ヨーロッパ神経科学会にて発表)。様々なスクリーニングの結果、このCa応答は炭酸脱水素酵素阻害剤によって抑制された。そこで、内因性CO_2感受性細胞のCa応答が、細胞内H^+濃度上昇に起因しているかどうかを判断するため、細胞内pH値変化の計測を試みた。1波長励起からの2波長蛍光を計測可能な多波長同時観察ユニットシステムを組み合わせた特殊高速高感度光計測システム(Brain Vision社製MiCAM Ultima)を用いて、細胞内pH値の変動のイメージング化に成功し、高CO_2負荷による細胞内pH値の低下が観察された。従って、CO_2感受性は細胞外pH変化ではなく、CO_2負荷による細胞内pH低下によってCa応答が引き起こされる仮説が示唆された。一方で、グラミシジン-パッチクランプ法によって、膜電位変化を計測したところ、高CO_2負荷による膜の脱分極が観察されたが、Na電流が検出されないことから、グリア細胞がCO_2感受性を持っていることが示唆された。現在、これらの成果を論文投稿する準備中である。
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