本年度はバゾプレッシン(AVP)-eGFPトランスジェニック(Tg)ラットを用い、時差ぼけモデルを作成し、視床下部の遺伝子発現への影響を検討した。4:00、8:00、12:00、16:00、20:00、24:00の6点でTgラットの脳を採取し、視交叉上核(SCN)においてeGFP mRNA、AVP hnRNA、AVP mRNA、Perl mRNA、Per2 mRNAをin situ ハイブリダイゼーション法で定量化し、各遺伝子発現のサーカディアンリズムを測定した。また、23:00に8時間明期開始時刻を前進させた時差群を作成し、12時間後、3日後、7日後の暗期開始時刻(11:00)に脳を採取し、上記の遺伝子発現をSCN、視索上核および室傍核において、galanin mRNAを腹外側視索前核(VLPO)において同様の方法で定量化し、比較した。その結果、TgラットのSCNの各遺伝子発現は明確なサーカディアンリズムを示した。また、時差群ではSCNでeGFP mRNA、AVP hnRNA、Per1 mRNA、Per2 mRNAレベルが有意に低下し、特にeGFP mRNA、AVP hnRNA、Perl mRNAレベルはその低下が7目後でも観察された。VLPOでのgalanin mRNAレベルは12時間後にのみ有意に上昇した。時差群においてAVP mRNA、レベルはほとんど変化しないにも関わらず、eGFP mRNAレベルの低下が観察された。したがって、eGFPmRNAの変動はAVPmRNAの変動より大きい可能性が考えられる。また、VLPOでのgalanin mRNAの変化は明暗サイクルの変化により睡眠量が変化したことを示唆する。AVP-eGFP TgラットにおいてSCNのeGFP遺伝子発現はサーカディアンリズムを有しており、リズムの変動を見る上で有用な指標になると考えられる。
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