本年度の研究により、脳梗塞障害半球の障害領域に相同な健常側の神経細胞突起(スパイン)が、脳梗塞発生後1週間日で特異的に可塑性亢進を起こしていることが2光子励起レーザー顕微鏡を用いたIn vivo imagingにより確認できた。この前後における脳機能、及び行動実験を通じた機能評価を行ったところ、可塑性亢進が起こるまでに(1)2日目〜1週間目までの脳活動の亢進していることが、放射性同位体標識物質を用いた非侵襲的計測により明らかになった。(2)通常障害側へ投射する患肢からの入力が健常側相同領域で増加していることが、電気生理学的実験により明らかになった。また、可塑性亢進の起こったあとでは(3)患肢からの入力が健常側で明確に情報処理されている電気生理学的所見が波形解析により明らかになった。(4)機能障害からの回復が行動実験により確認された。また、行動薬理実験による健常側半球の機能評価によって、可塑性亢進が起こった後では、健常半球のみで、両側の情報処理が行われていることが確認できた。これらの成果は、臨床的に言われている早期リハビリテーションが奏効する根拠の一端を示すものであり、この研究成果をもとにした効果的なリハビリテーションプランの創出が狩野になることが予想される。また、マウスという扱いやすい動物モデルにおいて、ヒトと同じような機能回復が起こることが確認できたことから、新治療法・新薬創出の際の評価系として十分利用可能であることを間接的に証明したと考えられる。
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