研究概要 |
【研究目的】一部の不眠症患者は,実際の睡眠時間は質、量ともに正常であるにもかかわらず,主観的には眠れないと苦痛を訴える(主観的および客観的睡眠時間の乖離)という睡眠状態誤認に陥っている.本研究では,主観的及び客観的睡眠時間の乖離メカニズムとその制御法に関する基盤データを取得することを目的に,睡眠時間,睡眠深度,睡眠効率,中途覚醒時間,生体リズム位相などの客観的睡眠パラメータが,主観的睡眠感にどのように影響するか,6ブロック評価プロトコルを用いて明らかにした.本研究は研究代表者が所属する国立精神、神経センター武蔵地区倫理委員会の承認を得たものである. 【研究方法】規則正しい睡眠習慣であることを確認した健常成人男性17名を対象とした.実験は,0-9時までの睡眠をとる夜間睡眠条件,および,生体リズムの逆位相にあたる12-21時まで睡眠をとる昼間睡眠条件の2つの睡眠条件を設定した.9時間の睡眠区間を6ブロックに分け,各ブロックで1回覚醒させ,主観的睡眠時間を得た(6ブロック評価プロトコル).実験中は自記式スケールにて眠気、気分などの心理状態を把握しながら,全ての被験者に対し深部体温測定,ホルモン測定による生体リズム位相を判定するとともに,睡眠ポリグラフ記録を行い,睡眠ポリグラフ解析により睡眠、覚醒度を判定した. 【研究結果と考察】健常成人では夜間,昼間どちらの睡眠条件においても睡眠の前半に比較して睡眠後半における睡眠時間を実経過時間より短く見積もることが明らかになった.重回帰分析の結果,主観的睡眠時間に有意な正の関連を持つ客観的パラメータとして徐波睡眠出現率が抽出された.すなわち,主観的睡眠時間は睡眠をとる時間帯に関わらず睡眠中の徐波睡眠量に影響を受けることが示された.
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