研究概要 |
マスト細胞はI型アレルギーや炎症に重要な役割を果たす細胞であり、ヒスタミンやエイコサノイドといったアレルギー・炎症のメディエーターを顆粒中に貯蔵している。外部からの刺激に誘発された脱顆粒によりメディエーターが放出されるが、その脱顆粒に活性酸素が関与することが以前から報告されている。活性酸素産生酵素であるNADPHオキシダーゼの触媒サブユニット.NOXには5種類のアイソフォームが存在するが、申請者はマスト細胞においてNOX1のみが発現することを見出した。このことはマスト細胞における活性酸素の産生にはNOX1が必須であることを示唆している。しかし野生型およびNOX1遺伝子欠損(NOX1-KO)マウスの骨髄由来マスト細胞(BMMC)、および腹腔マスト細胞を用いた検討では、脱顆粒の程度、ヒスタミン含量、プロテアーゼ活性、染色像のいずれについても、野生型とNOX1-KOで差異は認められなかった。BMMCの活性酸素産生量を、膜非透過型プローブであるルシゲニンの化学発光を指標として測定したところ、野生型とNOX1,KOで差が認められなかった。しかし細胞をポッターホモジナイザーで処理した後測定すると、NOX1-KOでは有意に活1生酸素産生量が少なかった。このことから、NOX1は顆粒膜上に局在し、無刺激時には顆粒内に活性酸素を放出しているが、脱顆粒に伴い細胞外に放出するようになると考えられた。NOX1により産生される活性酸素がマスト細胞のメディエーターのひとつであることが示唆された。
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