ストレス社会の現在、不安やうつなどの気分障害は重大な社会問題となっている。過剰なストレスは扁桃体において嫌悪な刺激として記憶され、不安やうつの増悪が起こる。まずNOX1/NADPH oxidaseと記憶・ストレス応答について行動解析を行った。 <記憶におけるNOX1/NADPH oxidaseの機能解析> 以前、Nox1遺伝子欠損マウス(Nox1^<-/Y>)はpassive avoidance testでの移行時間低下を示すことを見いだしていた。この試験では電気ショックによる嫌悪刺激を負荷するため、刺激負荷後のストレスによる情動変化が大きく関与する。まずこの影響を調べるため、刺激負荷後1時間および24時間の不安行動をopen field testおよびElevated Plus Maze testにより評価したが、両マウス群で不安の程度に差は見られなかった。これらの結果は、情動変化は同程度惹起されるものの、その後の記憶の形成・保持等がNox1^<-/Y>マウスで減弱していることが示唆された。現在、恐怖条件付け試験の条件設定を行っており、確立次第、行動解析を行う。 <ストレス応答におけるNOX1/NADPH oxidaseの機能解析> Nox1^<-/Y>マウスは野生型マウスと比較して、ストレス非存在下では同程度の不安レベルを示したが、拘束ストレス(2時間)負荷により惹起される不安レベルの亢進および血漿中のACTH濃度の増加を抑制することを見いだした。そこで本年度はHPAaxisの中で、不安に関与するCRHに注目し、ストレス負荷によるCRH産生増加や、CRHとその受容体のCRH-R1との結合能や活性化能に対してNOX1がどのような影響を及ぼすかを解析する。
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