研究概要 |
アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)の根本的治療には、脳内に沈着するアミロイド(amyloid-β peptide, Aβ)を減少させることが必要であり、産生抑制、分解促進、沈着抑制ならびに沈着Aβの溶解などを標的とした薬剤の開発が行われている。対処療法しかないADに対し、新規治療薬候補を探索するために培養細胞を用いてAβ量を減少させる化合物をスクリーニングしたところ、分子量200程度の新規の化合物であるKM3558を見出した。KM3558は濃度依存的にAβ産生を有意に低下させるが、いくつかの神経系培養細胞においては細胞毒性を示した。細胞毒性における作用機序は現在検討中である。また、培養細胞において、KM3558およびKM3558Aが各セクレターゼやAβ分解酵素などに対してどのような作用を示すかも現在解析中である。一方、動物実験を考慮して、KM3558の生物学的利用率をさらに高めるためにKM3558の水酸基を極性のない官能基に置換した化合物KM3558Aを合成した。KM3558Aは体内で酸化的に代謝され、さらに加水分解を受けてKM3558として体内に存在することがラットを用いた実験から明らかになった。野生型マウスおよびADモデルマウスであるTg2576に対するKM3558またはKM3558Aの投与実験は現在検討中であり、脳内Aβ量の変化やKM3558およびKM3558Aの脳への移行性などを今後解析していく。
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