STZラットに対し、インスリンを慢性投与して高インスリン血症糖尿病モデルを作成し、胸部大動脈のET-1収縮の検討を行った。本モデルにて、ET-1反応性が増大し、これは、angiotensin II(Ang II)増加による、ETA receptor増加、MEK/ERK pathway亢進が原因であることを明らかとした。2型糖尿病モデルのGKラット腸間膜動脈も、ET-1収縮反応性が増大し、これには、MEK/ERK pathwayが関与していた。2型糖尿病モデルのOLETFラット腸間膜動脈にて、内皮由来因子バランス変化(EDHF低下、EDCF増大)を前年度より見いだしていたが、この動物に、薬物を慢性投与して改善効果を検討した。(1) Cilostazol(EDCF変化なし。cAMP/PKA pathway改善によってEDHF改善)。(2) Metformin[EDCF産生(血管収縮性プロスタノイド)抑制。EDHI改善]。(3) EDCFの成分であるトロンボキサンA2合成酵素阻害薬(ozagrel)でEDHF改善。(4) EPA[EDCF産生抑制。EDHF改善]。以上より、高インスリン血症あるいはインスリン抵抗性病態を基盤とする血管障害に対して、AngIIや、ET-1が異常を引き起こす原因であることを明らかとし、それに関連する情報伝達因子についても明らかとした。また、2型糖尿病ラット腸間膜動脈にてEDHF障害が起こっている状態から、PDE3阻害薬、metformin、ozagre1、EPAを慢性投与することでEDHFシグナルが改善することが明らかとなり、EDCFがEDHFシグナルを抑制していることを見いだした。EDHFシグナルは、血管径が小さいほど重要であるため、高インスリン血症、インスリン抵抗性病態などの2型糖尿病病態時における細小血管障害に対する治療戦略の-端が本研究によって見いだされた。
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