中枢神経作用薬の効果あるいは末梢作用薬の中枢毒性を予測する上で、血液脳関門(BBB)の透過性を評価することは必須である。近年の生活習慣を鑑みて、薬物治療中の患者の背景病態として肥満を捉えると、肥満時のBBB機能解析が薬物の中枢作用を予測する鍵となる。肥満病態におけるアディポサイトカインの役割が明らかとなりつつあるが、BBB機能に及ぼす影響についてはほとんど判っていない。本研究では、肥満時BBB病態の解明を目的とし、アディポサイトカインによるBBB機能制御機構を追求することを目的とする。昨年度は、BBB制御の攻撃因子(NO)と防御因子(TGF-β)を抽出した。その中でBBB構成細胞であるペリサイトの未だ明らかでない生理的役割およびアディポサイトカインとの相互作用を追求することが重要であると結論した。本年度の成果は以下のとおりである。 1. 炎症性刺激によりBBB基底膜からのペリサイトの脱落が認められ、BBB機能が低下した。 2. ペリサイトの脳微小血管調節機能において、アドレノメデュリンは弛緩因子の1つであり、それはミオシン軽鎖のリン酸化を介していることが判った。 3. 炎症性サイトカインであるオンコスタチンMは、BBB機能を低下させることが判った。 4. アディポネクチンのペリサイトへの作用は観察されなかった。 以上、BBB構成細胞であるペリサイトに着目し、その機能を調節する因子を明らかとした。しかし当初の目的であるアディポサイトカインについては、BBB機能に対する作用が認められなかった。アディポサイトカインのみならず肥満時に特異的な因子によるBBB機能解析を継続していく必要がある。
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